「機能性表示食品」──消費者庁の今後の方針を踏まえて 2025年7月2日コラム健康寿命を延ばしたい、毎日を元気に過ごしたい──こうした思いから、食事やサプリメントなどに注目が集まっています。中でも、「機能性表示食品」という言葉を目にする機会が増えているのではないでしょうか。これは、健康への具体的な働き(機能性)を科学的根拠に基づいて表示できる食品制度のことを指します。 しかし、「特定保健用食品(トクホ)」や「栄養機能食品」とどう違うのか、また、どのように選べばよいのかについては、まだ一般に十分浸透しているとはいえません。本コラムでは、機能性表示食品の基本と、消費者庁が発表している今後の制度運用の方針を分かりやすく解説します。 Contents1. 機能性表示食品とは?2. なぜ今、注目されているのか3. 消費者庁の発表と今後の方向性4. 消費者として気をつけたいポイント5. 最後に 機能性表示食品とは? 機能性表示食品は、2015年にスタートした比較的新しい制度です。企業が「おなかの調子を整える」「目の疲れを和らげる」といった機能性を表示できる仕組みで、特定保健用食品(トクホ)のように国の個別許可を必要としないのが特徴です。 届出をすれば販売が可能で、研究レビュー(既存の論文などの総合評価)や臨床試験などを用いて機能性の根拠を示します。ただし、その表示は「疾病の予防や治療効果」をうたうことはできず、あくまで「健康の維持・増進をサポートする」レベルにとどまります。 なぜ今、注目されているのか 背景には高齢化の進行や、健康意識の高まりがあります。日本はすでに人口の約3割が65歳以上の超高齢社会に突入しています。生活習慣病予防や認知機能の維持など、医療や介護に頼らず自立した生活を送りたいというニーズが増え、それを支える手段として、日々の食事を見直す動きが活発化しています。 また、コロナ禍を経て「免疫力」や「腸内環境」といったキーワードが一般にも広く浸透したこともあり、エビデンスに基づく食品への信頼が高まっています。 消費者庁の発表と今後の方向性 消費者庁は機能性表示食品制度に関する新たな対応方針を公表しました。ポイントは大きく3つです。 1.健康被害の情報提供の義務化 食表示基準における届出者の遵守事項として、健康被害と疑われる情報を把握した場合は、当該食品と因果関係が不明な状況でも消費者庁長官や都道府県知事等に情報提供をすることが定められます。 2.機能性表示食品制度の信頼性を高めるための措置 製造工程管理による製品の品質確保を徹底する観点から、機能性表示を行うサプリメントについてはGMP(※1)に基づく製造管理を食品表示法における届出者の遵守事項として定められます。 ※1GMP:Good Manufacturing Practice(適正製造規範) 3.国と地方の役割分担 複数の重篤例又は多数の健康被害が短期間に発生するなど緊急性の高い事案であって、食品の流通形態などから広域にわたり健康被害が生じるおそれがあり、全国的な対応が求められるもののうち、健康被害の発生機序が不明であり、その特定のために高度な調査が必要だと国が判断した事案については、都道府県等と連携しつつ、必要に応じて国が対応する。 これらの施策により、消費者が安心して機能性表示食品を選べる環境整備が期待されています。 消費者として気をつけたいポイント 制度が整備されてきているとはいえ、すべての機能性表示食品が「必ず効果がある」わけではありません。以下の点に注意することで、より賢い選択ができます。 表示内容を確認する:「◯◯をサポート」といった文言が、何に対するものなのか明確に読み取れるか確認しましょう。 摂取目安を守る:たくさん摂ればより効果があるとは限らず、むしろ過剰摂取が問題になるケースもあります。 食事のバランスが基本:機能性表示食品はあくまで補助的な役割です。まずは食事・睡眠・運動の基本が大切です。 最後に 機能性表示食品は、消費者の健康を支える強力な選択肢であると同時に、企業にとっては信頼を築く重要な手段でもあります。消費者庁の制度改正は、その両者をつなぐ橋渡しといえるでしょう。 今後は、情報の透明性と科学的根拠の明確化が一層求められます。企業が真摯にエビデンスを提示し、消費者が正しい情報をもとに選択できる市場環境の実現が、今まさに問われています。