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食中毒の脅威から身を守る~細菌別予防策~

コラム

食品を安全に楽しむためには、細菌性食中毒のリスクを理解し、適切な予防策を講じることが重要です。特に夏季には、細菌が繁殖しやすくなるため、注意が必要です。

 

今回は、細菌性食中毒の分類とその予防法について解説します。具体的には、サルモネラ、カンピロバクター、ウェルシュ菌、黄色ブドウ球菌に焦点を当て、それぞれの特徴や症状、感染源、予防法について紹介します。

 

細菌性食中毒の分類

細菌性食中毒は、原因となる細菌の種類や感染経路により以下のように分類されます。


・感染型
感染型の細菌性食中毒は、原因菌が体内に侵入して増殖し、腸管に感染することで発症します。感染型はさらに以下の2つに分類されます。
‐ 感染侵入型
このタイプは、原因菌が増殖し、腸粘膜に侵入することで発症します。代表的な細菌にはサルモネラ、カンピロバクター、リステリア、エルシニアがあります。
‐ 感染毒素型
原因菌が増殖し、腸管内で毒素を産生することで発症します。腸管出血性大腸菌(O157等)、赤痢菌、コレラ菌、ウェルシュ菌がこのタイプに該当します。


毒素型
食品中で原因菌が増殖する過程で産生される毒素を摂取することで発症します。黄色ブドウ球菌、セレウス菌、ボツリヌス菌がこのタイプの代表例です。

サルモネラの特徴と予防法

【特徴】
サルモネラは、感染侵入型の細菌で、腹痛、嘔吐、下痢、発熱などの症状を引き起こします。潜伏期間は平均して12時間です。


【感染源】
サルモネラの感染源は多岐にわたり、二次汚染された食品の生食や加熱不十分な調理、生卵、卵加工品、鶏肉料理、レバ刺し、焼肉、ペット媒介などが含まれます。


【発生数】
サルモネラによる食中毒は、1998年までは集団食中毒事件の第1位でしたが、その後は減少傾向にあります。発生時期は夏季がピークです。


【防止法】
サルモネラによる食中毒を防ぐためには、以下の対策が有効です。

  1. 食品の十分な加熱
  2. 鶏肉の生食を控える
  3. 鶏卵を生食する場合は、冷蔵保存し、賞味期限内に食べる
  4. ペットを触った後は手洗いを徹底する(特に爬虫類)

カンピロバクターの特徴と予防法

【特徴】

カンピロバクターは、微好気性で低温に弱く、少量の菌でも発症する可能性があります。下痢、腹痛、発熱、倦怠感、頭痛、嘔吐などの症状に加え、ギランバレー症候群を引き起こすこともあります。潜伏期間は1~7日で、平均して3日です。

 

【感染源】

カンピロバクターの感染源は、汚染された食品の生食や不十分な加熱調理、鶏肉の生食(鶏の刺身、鳥わさ等)、牛のレバ刺し(=禁止された)、サラダ等、ペットによる媒介が含まれます。

 

【発生数】

カンピロバクターによる食中毒の事件数、患者数はノロウイルスと並び1位または2位を争います。発生ピークは夏季です。

 

【防止法】

カンピロバクターによる食中毒を防ぐためには、以下の対策が有効です。

  1. 食品の十分な加熱
  2. 鶏肉の生食を控える
  3. 食品を冷蔵保存する
  4. ペットを触った後は手洗いを徹底する

ウェルシュ菌の特徴と予防法

【特徴】
ウェルシュ菌は、土壌などの自然界に広く分布し、ヒトの腸内にも常在する非病原性タイプが存在します。偏性嫌気性であり、酸素存在下では増殖できません。大量調理で発生しやすく、エンテロトキシンという毒素を産生し、芽胞(耐熱性)を作ります。

 

※芽胞は加熱や乾燥に強く、長期間生残します。芽胞によっては、加熱では死滅しないことがあるため要注意です。

 

【症状】
ウェルシュ菌による食中毒の症状には、水溶性の下痢、腹痛(嘔吐はまれ)、腹部膨満感などがあります。潜伏期間は約12時間です。

 

【感染源】
ウェルシュ菌の感染源は、シチュー、カレー、肉じゃがといった煮込みものやアジの南蛮漬け等から感染します。また、給食のように大量調理する際に加熱が不十分な食品は注意です。

 

加熱調理

カレーなどを大量に作る際、加熱すると熱に弱い菌は死滅しますが、熱に強い芽胞のウェルシュ菌が生き残ります。

室温放置

鍋の中は酸素が少ない状態で、ウェルシュ菌が増えやすくなります。温度が約45℃以下まで下がると、芽胞から目覚めた菌が急激に増殖し始めます。

再調理

芽胞のないウェルシュ菌は熱に弱いですが、再調理の際にしっかり再加熱しないと菌が生き残ってしまいます。

食中毒

ウェルシュ菌が付いている食品を食べると、菌が腸内で増殖して毒素を産生し、下痢や腹痛などを引き起こします。


このように、ウェルシュ菌による食中毒を防ぐためには、調理後の食品を適切に冷却し、再加熱する際には十分に加熱することが重要です。

 

【発生数】

年間30件弱の食中毒が報告されています。

 

【防止法】

ウェルシュ菌による食中毒を防ぐためには、以下の対策が有効です。

1.  低温で保存する
2.  再加熱を十分行う
3.  加熱はしっかりとかき混ぜて行う

黄色ブドウ球菌の特徴と予防法

【特徴】

黄色ブドウ球菌は、手指や鼻腔等の粘膜に常在し、土壌や下水などあらゆるところに存在します。化膿性疾患の原因菌であり、耐塩性を持ちます。エンテロトキシンという毒素を産生し、芽胞は形成しません。

 

【症状】

黄色ブドウ球菌による食中毒の症状には、嘔吐、吐き気、腹痛、下痢があります。潜伏期間は約3時間と非常に短いです。

 

【感染源】

黄色ブドウ球菌はあらゆる食品で発生します。

 

【発生数】

年間30件前後の食中毒が報告されています。

【防止法】

黄色ブドウ球菌による食中毒を防ぐためには、以下の対策が有効です。

  1. 食品の十分な加熱
  2. 食品の冷蔵保存
  3. 手指に化膿創がある場合は調理を避け、調理前の手洗いを徹底する
  4. 汚染が疑われた食品は廃棄する

まとめ

細菌性食中毒は、適切な予防策を行うことで防ぐことができます。感染型と毒素型の違いを理解し、それぞれの細菌の特徴に合わせた対策を実践することが重要です。
特に夏季には、食品の取り扱いに十分注意し、安全な食生活を心がけましょう。日常生活でのちょっとした工夫が、細菌性食中毒から家族や自分自身の健康を守ることに繋がります。