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栄養成分表示の義務化とは?(後編)

コラム

今回の後編では、諸外国の栄養成分表示に対する実際の取組みについてご紹介します。

 

前編では、平成27年4月1日に施行された食品表示法の改正により、義務化となった栄養成分表示について表示項目や義務・推奨・任意表示の考え方、包装前面栄養表示(Front of PackageNutrition Labelling:FOPNL)等についてご紹介していますのでご興味があれば、前編から是非ご覧ください。

 

前編のおさらい

平成27年4月1日に施行された食品表示法の改正により、容器包装入りの加工食品には栄養成分表示が義務化されました。これにより、熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウムが表示され、令和2年4月1日からは完全施行となりました。

 

 

これらの項目は生命維持に不可欠であり、日本人の主要な生活習慣病と深く関連しています。近年、消費者の健康意識が向上している中、栄養成分表示を確認する人も多いのではないでしょうか。栄養成分表示の義務化によって、栄養成分表示を確認することができ健康を維持・増進するために適切な食品を選択することが可能となります。

諸外国の取組み

1. スウェーデン王国
目的: 消費者が健康的な食品を見つけ、選択しやすくすること。

FOPNL: 健康的な食品を示すシンボルを使用。容器包装入りの加工食品と一部の生鮮食品が対象。

表示条件: 脂質、飽和脂肪酸、糖類、食物繊維、食塩相当量の基準を満たす場合にシンボル表示。

対象外食品: 3歳までの乳児及び幼児向け食品、甘味料(食品添加物)、Novel Food(チアシードなど)、植物ステロール含有食品(マーガリンなど)。

 

2.シンガポール共和国
目的: 消費者が十分な情報を得た上で食品を選択することを支援することで、バランスのとれた食事や健康的なライフスタイルを促進すること。

FOPNL: 健康的な食品を示すシンボルを使用。加工食品と生鮮食品の飲料、穀類、たんぱく質源など広範なカテゴリー食品が対象。

表示条件: 熱量、脂質、飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、コレステロール、糖類、食物繊維、ナトリウム、カリウム、カルシウム、全粒穀類、Glycemic Indexの基準を満たす場合にシンボル表示。

対象外食品: 糖分や飽和脂肪酸が多い飲料など。

 

3.メキシコ合衆国
目的: 肥満および肥満による疾患発症率を抑制するため、高エネルギーである加工食品や糖分を多く含む非アルコール飲料のパッケージに警告文を表示。

FOPNL: 特定の栄養成分の過剰摂取を示すシンボルを使用。加工食品と非アルコール飲料が対象。
表示条件: 熱量、飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、糖類、ナトリウムの1食分当たりの基準を超える場合に、該当する栄養成分名のシンボル表示。

対象外食品: 業務用加工食品、業務用非アルコール飲料、組み合わせて販売する食品、販売時に包装する食品。

 

4.カナダ
目的: 飽和脂肪酸、糖類、ナトリウムが多く含まれる食品を見分けやすくし、健康リスクを軽減。

FOPNL: 特定の栄養成分の過剰摂取を示すシンボルを使用。加工食品が対象。
表示条件: 飽和脂肪酸、糖類、ナトリウムの1食分当たりの基準を超える場合に該当する栄養成分名のシンボル表示。

対象外食品: 特別用途食品(乳児用調整乳、病者用食品)、6ヶ月から1歳までの乳児向け食品、Meal replacements、栄養補助食品など。

 

5.タイ王国
目的: 消費者の栄養状態を改善し、非伝染性疾患のリスクを低減するという公衆衛生の目標を支援。
FOPNL: Guideline Daily Amounts (GDA) 方式で表示。種実類、乳類、菓子類、穀類、調理済み食品、嗜好飲料類(非アルコール飲料)が対象。
表示条件: 熱量、脂質、糖類、食物繊維、ナトリウムのGDA方式で表示。

 

6.イタリア共和国
目的:食品の栄養素と成人の1日の必要量に対する貢献を理解させるための消費者への情報提供。
FOPNL: GDA方式で表示。全ての食品が対象。
表示条件: 熱量、脂質、飽和脂肪酸、糖類、食塩相当量のGDA方式で表示。
対象外食品: 生鮮食品、ナチュラルミネラルウォーター、容器包装の表示可能面積が小さい食品、栄養の共有源として寄与の程度が小さい食品、小規模事業者が製造する食品、EU 域内における高品質な食品を知的財産として保護する制度の表示(GI保護制度)がされている食品(ハム、ワイン等)など。

 

7.英国
目的: 一目でわかる栄養情報を提供することで消費者が栄養情報に基づいて食品を選択し、食事バランスへの配慮やエネルギー摂取量を管理できるようになること。
FOPNL: GDA方式と含有量に合わせた色分けで表示。全ての食品が対象。
表示条件: 熱量、脂質、飽和脂肪酸、糖類、食塩相当量のGDA方式で表示。色分けにより基準値を示す。
対象外食品: 生鮮食品等、ナチュラルミネラルウォーター、容器包装の表示可能面積が小さい食品、栄養の共有源として寄与の程度が小さい食品、小規模事業者が製造する食品など。

 

8.フランス共和国
目的: 消費者の健康的な食品選択を促進し、食品関連事業者における、より健康的な食品開発を促進。
FOPNL: 色分けとアルファベットランクで表示。全ての食品が対象。
表示条件: 熱量、たんぱく質、飽和脂肪酸、糖類、ナトリウム、食物繊維、野菜類、果実類、種実類、豆類の評価に基づく表示。
対象外食品: 生鮮食品、ナチュラルミネラルウォーター、容器包装の表示可能面積が小さい食品、栄養の共有源として寄与の程度が小さい食品、小規模事業者が製造する食品など。

 

9.オーストラリア連邦
目的: 食品の容器包装を便利で適切なものにし、消費者が十分な栄養情報を容易に理解したうえで食品を購入することで、健康的な食生活を選択できるようにすること。
FOPNL: 星によるランク付けを使用。自国の栄養プロファイリングシステムに基づく評価。加工食品が対象。
表示条件: 熱量、たんぱく質、飽和脂肪酸、糖類、食物繊維、ナトリウム、野菜類、果物類、果実、豆類を自国の栄養プロファイリングシステムに基づく評価によって、星でランク付け。また、GDA方式や栄養強調表示をすることができる。
対象外食品: 特別用途食品(乳児用調整乳、病者用食品)、1歳から3歳までの幼児向け食品、スポーツ用サプリメント、酒類など。

 

以上、9か国の栄養成分表示に対する実際の取組をご紹介しました。

 

各国の取り組みは、栄養情報の提供や表示方法において異なる方法をとっていますが、どの国も消費者が食品の栄養価を理解しやすくするための工夫がされています。また、国ごとに異なるニーズや文化に合わせて調整されており、各国が消費者の健康増進に向けた努力を行っていることが伺えます。

まとめ

新たな栄養成分表示制度は、消費者の健康増進と食品表示の改善を目指しています。健康的な食環境づくりを推進する機会として、国際的な視点も取り入れながら、適切な情報提供が求められている中どのような取り組みを行っていくか今後も考えつづけていくことが重要でしょう。

今回ご紹介した諸外国の取組みを参考にしつつ、日本もより効果的かつ使いやすい栄養成分表示の在り方を模索していくことが必要です。