経過措置期間満了で何が変わる?食品容器包装の新規制対応ガイド 2025年10月17日コラム近年、食品業界では安全性・環境性の両面から食品容器包装に関する規制強化が進んでいます。特にプラスチック資源循環法や食品衛生法の改正に伴い、食品容器包装の原材料や表示、リサイクル対応などに新しい基準が導入されました。 これらの規制には一定の経過措置期間が設けられていましたが、2025年5月31日に経過措置期間が満了し、今後はすべての事業者が新基準に準拠する必要があります。今回のコラムでは、経過措置満了によって何が変わるのか、そして企業はどのように対応すべきかを整理します。 Contents1. 規制改正の背景2. 新規制のポイント3. 経過措置満了で起こる変化4. 企業がとるべき対応5. まとめ 規制改正の背景 食品容器包装は、食品の保存性や安全性を担保する一方で、環境負荷の大きさが課題となってきました。使い捨てプラスチックの大量使用は海洋汚染やCO2排出の要因となり、国際的にも「脱プラスチック」や「サーキュラーエコノミー」へのシフトが加速しています。 国内でも2022年のプラスチック資源循環法の施行や、食品衛生法のポジティブリスト制度導入などを受け、食品容器包装の安全基準・環境基準が段階的に強化されてきました。その猶予期間として設けられた経過措置も満了を迎え、いよいよ実質的な切り替えが求められる段階に入ります。 新規制のポイント 経過措置期間満了後に完全適用される食品容器包装規制の要点は、主に次の通りです。 1.ポジティブリスト制度の完全適用 食品と接触する器具・容器包装の原材料について、厚生労働省が認可した物質のみを使用可能とする制度。これまでは経過措置で旧来資材の使用が認められていましたが、今後は認可外の原材料は一切使用できなくなります。 2.環境配慮設計の義務化 包装資材におけるリデュース(削減)、リユース(再使用)、リサイクル容易化が求められます。特にプラスチックの使用量削減や紙素材への切り替えなどが推奨され、企業には環境配慮設計の説明責任が課されます。 3.表示の透明性向上 容器包装に使用している素材やリサイクル適性を明確に表示する義務が強化されます。消費者への情報提供に加え、自治体やリサイクル業者への対応が必要となります。 経過措置満了で起こる変化 経過措置が満了すると、これまで従来資材を継続利用してきた企業も、一斉に新基準へ移行しなければなりません。想定される影響は以下の通りです。 ・使用可能な原材料の制約 認可外資材を使った容器包装は製造・販売ができなくなり、資材調達の選択肢が大幅に制限されます。 ・既存在庫の取り扱い 経過措置期間中に製造された資材在庫は、終了日以降は販売不可となる場合があるため、廃棄や切り替えの判断が必要です。 ・調達コストの上昇 環境対応資材は従来素材よりコストが高い場合が多く、調達コスト上昇が企業収益に影響する可能性があります。 ・監査・取引先対応の強化 大手小売や海外輸出市場では、法令以上の環境基準を求める動きがあり、適合証明やトレーサビリティが必須となります。 企業がとるべき対応 経過措置満了後、食品関連企業が取り組むべき対応は次のとおりです。 1.資材調達の早期見直し 既存資材がポジティブリストに登録されているか確認し、必要に応じて認可資材への切り替えを進める。 2.在庫管理の徹底 経過措置満了日以降に不適合資材が残らないよう、在庫消化の計画を立てる。 3.サプライヤーとの連携強化 原材料の適合証明や環境配慮情報を規格書に盛り込み、調達段階からトレーサビリティを確保する。 4.品質管理システムの導入 容器包装の規格書をデータベース化し、法令適合状況や環境データを一元管理することで、監査・取引先への対応をスムーズにする。 5.社内教育と情報発信 開発部門・購買部門・営業部門が共通認識を持つための研修を行い、消費者や取引先に対しても積極的に情報を開示する。 まとめ 食品容器包装に関する新規制は、経過措置期間の満了により、いよいよすべての事業者にとって現実的な課題となります。従来資材の使用が制限され、調達・在庫・コスト・表示など幅広い領域で対応が必要です。 一方で、環境配慮や透明性の高い経営は、消費者の信頼獲得や新たなビジネス機会の創出につながります。企業は規制対応を「義務」として捉えるのではなく、持続可能な成長を実現するための「投資」と位置づけ、積極的に取り組むことが求められています。 また、TOREPAS や TOREPAS BANK+ を導入すれば、ポジティブリストに基づく資材情報の管理や、サプライヤーからの規格書回収・更新を効率化することが可能です。これにより、法令対応だけでなく監査や取引先からの要求にもスムーズに応じられ、企業の信頼性強化につながります。 規制対応を負担とせず、システムを活用して透明性と効率性を高めることこそ、これからの食品業界に求められる競争力の源泉となるのではないでしょうか。