簡素なることを見直したい

「才ある者は徳がなく、徳がある者は才がない。人間はとかくそうしたものだ。まことの人材は得がたい」ものだ、幕府財政をほしいままに私腹をこやしたとして勘定奉行荻原重秀の更迭をもとめる新井白石に「しかしほかには国の財政をまかせるに足る適当な人物がおらぬ。荻原を罷免するのはいとやすいが、後が困ろう」と将軍家宣がさとす。―「市塵」藤沢周平―

財政のさじ加減が民のフトコロ具合を左右する。
先の衆議院選挙で国民は保守政権を“NO“とした。郵政民営化・財政再建など小泉改革のいきおいも、そのご3代の短命政権で潰えた。
「100年に一度の米国発同時不況」の対応は誇れる。として退陣した政権に、 元大臣の一人は“100年に一度”をとなえるのは“excuse”にすぎない、との声も。借金が860兆円もある国がさらに才気煥発、14兆円ものお金をたかだかとばらまくも、はなさかじいさんの徳行とはいかず。借金をかさねた経済対策も、雇用など景気の先行きに曙光はみえない。

脱官僚をかかげている新政権には「才」も「徳」も惜しみなく発揮して、簡素でわかりやすい実効性のある政策を確実に進めてほしいものだ。
世の中、各方面で簡素を求める声は多い。

一時期官製不況“がいわれた。改正貸金業法・改正建築基準法など、過剰ともみられた規制により、関係企業の活動を抑制・鈍化して経営を悪化させたとみる。法令順守の審査・手続きが企業の生産性にも影響しコンプライアンス不況ともよばれる。
全国1万7千人あまりの郵便局長へのアンケートが発表された。「郵便局への不満、書類などの煩雑さが最多に」―日経ネット0908―それによると、「利用者の苦情として、窓口で求められる証明や書類の煩雑さに対する不満がもっとも多い」そうだ。
そして「郵便局の将来については、人員の効率化で十分なサービスが提供できなくなることへの不安」も多い。

少年による万引きが絶えないあるキッズ店をテレビが報道していた。ゲーム感覚での万引きか、そこの店長によると警察に届けるのは10件2件ていどだという。なぜなら、警察に行くとなんやかんやの事情聴取や手続きに時間がとられてお店の売り上げが低下するという。

役所の特性に、まちがいなく仕事をする「無謬性」があるという。うらをかえせば、いちいちに手間ひまがかかるということになる。その結果として景気が失速したり、犯行を大目にみて再犯をゆるし更生の機会を失うことは社会的損失をもたらす。
電子化による行政の効率化が進行している面もむろんある。
近在の図書館はネットで予約できる。以前は読みたい本が他地域に所蔵されている場合は、リクエストカードに所要事項を記載して申し込んでいたからじかんはかかるし、図書館へ二回足を運ばなくてはならなかった。
ネット予約で窓口にいけば、求める本が用意されている。大変便利になった。

ある会社が社内書類の電子化を実施した。しかしもくろんだ利便性の声が聞こえない。現場で聞いてみると、文書管理ソフトを操って目的の文書をさがすのに大変手間がかかる。書棚から現物をもってきたほうがよほど早い。との現実であったそうだ。
いまや、企業活動に不可欠な文書は数多い。個人情報保護法・内部統制・品質管理など前述のコンプライアンスに関わるものは、災害対策を考慮しながら迅速に検索閲覧できるものとしなければならない。
簡素でわかりやすい電子化が職場に組織に新たな「才」と「徳」を生み出す因子になりそうだ。

電子化やシステム化は、確実性と迅速化と省力化が売りになっている。
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